南ア南部 小聖岳(2880m)、前聖岳(3013m)、奥聖岳(2982m)、東聖岳(2880m)、白蓬ノ頭(2632m) 2010年8月7〜9日
所要時間
8/7 5:07 便ヶ島−−5:42 西沢渡−−7:36 2000m(休憩) 7:50−−9:06 薊畑 9:38−−10:15 小聖岳
10:44−−11:13 薊畑 11:24−−11:39 聖平(幕営)
8/8 4:07 聖平−−4:29 薊畑−−5:09 小聖岳−−6:08 前聖岳 6:23−−6:35 奥聖岳 6:50−−7:06 東聖岳−−8:05 白蓬ノ頭 8:32−−9:37 東聖岳−−9:59 奥聖岳 10:16−−10:32 前聖岳 10:46−−11:14 小聖岳−−11:35 薊畑 11:42−−11:56 聖平(幕営)
8/9 5:37 聖平−−5:58 薊畑−−7:31 西沢渡 7:39−−8:08 便ヶ島
概要 久しぶりに聖岳東尾根を歩く。今回は便ヶ島から入り、前聖岳から白蓬ノ頭を往復。天気は曇りだったが稜線にガスがかかることは無く視界は良好。稜線の踏跡の状態は以前と大差なく藪の経験者なら問題なく歩けるだろう。ただし、以前よりハイマツが少し伸びてはみ出しがひどくなり、寝たハイマツの個所は問題ないが立ったハイマツの個所では雨や露で濡れた場合は突入は躊躇われるかも。でもそんな区間でも踏跡はそれなりにある(一部ハイマツの上を強引に通る場所もあるが)。標高が2650mを切ると明瞭な刈り払いが現れ、標高2630m付近で樹林帯に突入。鞍部から登り返すと好展望の白蓬ノ頭に飛び出す。
奥聖岳〜白蓬ノ頭間でのポイントは2つ。奥聖岳からの下り初めは南東向きの尾根(主稜線)に踏跡があり、主稜線が東に分岐してもなお南西尾根を下ると小鞍部が登場し、東のルンゼを下る。ガレ上部を横断して稜線に出れば尾根を忠実に進む。もう1つのポイントは森林限界が終わって樹林に入ってから白蓬ノ頭西側鞍部までの間が踏跡薄く地形がなだらかで要注意。
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地図クリックで等倍に拡大 |
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遠山郷の集落を過ぎて無人地帯に突入すると、小さな谷からも土砂が押し出して重機で道端に寄せた跡があちこちに見受けられた。やっぱり先日の大雨の影響だろう。幸い、土砂の押し出しだけで路肩崩壊箇所が無かったのでこうして開通できたようだ。ただ、笠松山方面に上がる林道は重機で塞がれており、例のロックシェッドがある辺りで派手に崩れたのかもしれない。でも帰りには重機はどかしてあったので、もしかしたら終点まで入れるようになったのかもしれない。聖光小屋の駐車場まで入って車中泊すると\500を徴収されるため、易老渡の少し先の駐車スペースで仮眠する。易老渡駐車場では夜間に車が続々上がってきて安眠できないと判断したからだ。これは正解で静かに眠れた。
便ヶ島駐車場 | 便ヶ島登山口 |
翌朝、朝飯を食べて車を移動させ便ヶ島の駐車場に移動。駐車場の埋まり方は6分といったところか。まだ薄暗いが上空は青空のようだ。このまま3日間持ってくれるといいのだが。今日はもし聖山頂に行くとしても10時を過ぎるだろうから、この夏の期間では天気が良くてもガスが上がってくる可能性が高い。やっぱり明日の天候に賭ける方がいいだろう。ザックには3日間の食料、テントの他にフライも突っ込む。私の場合、通常ならフライは使わないのだが今回はどうも真面目な雨が降りそうな予感。古くなって縫い目の防水性能が落ちたゴアライトでは長時間の降雨では雨漏り必至なのでフライが必要となる。
登山口ではまだ薄暗くデジカメのシャッター速度が1/10秒くらいで手ぶれとなるが、どうにか見える程度には収まってくれた。最初は森林鉄道跡の軽トラなら走れそうな細い林道をショートカットして小さなトンネル手前に出て、あとは西沢渡まで軌道跡(現在は林道)を歩く。ここも数箇所で土砂の押し出しが見られたが重機で片付けられていた。
小さなトンネル | 西沢渡。今年は橋が架かっていた |
例年だと西沢渡は石伝いに渡渉するのだが、今年は橋がかけられたとの情報をネットで得ており、どんな橋なのかと思ったら大きな石の間を板で作った簡単な橋を渡しただけだった。私なら橋が無くても渡れるが、不慣れなオバチャンパーティーにとっては簡単な橋でも効果は絶大だろう。15年以上前、MIT氏やUGC氏等と登った当時からあった篭も健在だが、よほど増水しない限りは出番は無いだろう。
造林小屋 | 尾根下部はカラマツ植林帯 |
沢で顔や腕を洗って汗を洗い流し、ペットボトルに給水して出発。これも15年以上前からある造林小屋を通過して、次々と軽装の単独男性に追い越される。こちらは3日分の食料とテント、寝袋を担いだ大ザックなのでペースは上がらない、というか、涼むのがメインで今日は聖平までしか行かないので急ぐ理由はない。汗びっしょりになるよりのんびり歩いて涼しく登ろう。
シラビソが混じるようになる | 高度が上がるとシラビソ樹林 |
標高2000m肩で休憩。涼しい | 樹林の隙間から見た兎岳 |
何度も歩いた尾根だし百名山の登山道だから迷う心配は無い。尾根を巻いて急斜面をトラバースするところには安全ネットまで張られて至れり尽くせりだ。青空が広がって絶好の日和だが登りでは暑さの原因となる。しかしこの尾根は深い樹林に覆われて日差しが遮られ、標高の割には涼しく登れる。全く暑さを感じないわけではなく、麦藁帽子にTシャツ半ズボン姿、首には濡れタオル、片手は扇でパタパタとできる限りの放熱対策をしてもやっぱり体を動かすと汗は出る。標高2000mで傾斜が緩んだところで腹が減って少々休憩。体を動かさないとちょっと涼しすぎるくらいだ。
薊畑が近づくと樹林が明るくなる | 薊畑で一気に視界が開ける |
マルバダケブキのお花畑 | 薊畑。背景は前聖岳。空が青い! |
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薊畑から見た上河内岳〜光岳 |
ここまで来れば残りは少ない。傾斜が緩んだ深いシラビソ樹林を登りきると突如として樹林が切れて大展望が開ける。ここが薊畑でいつ来ても劇的な変化に感動する。非常にいい天気で上河内岳から光岳まぐるっと見えているし、聖岳山頂もまだガスはかかっていない。聖を往復するには時間的に充分あるが、山頂までまだ2時間かかる。2時間後も山頂で展望が得られる確証はなく、明朝早い時間の方が確実だろうと判断、当初計画どおり今日のところは聖は止めておこう。ただ、このまま聖平に下っても時間が余りすぎるので、森林限界を超える小聖までは行ってみるか。アタックザックに水と食料、少しの防寒着を入れて出発。薊畑には聖を往復している登山者がデポしたザックがいくつも転がっていた。
薊畑から小聖へと登る | 眼下に聖平 |
森林限界を突破 | 小聖岳山頂 |
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小聖岳から見た上河内岳〜光岳(クリックで拡大) | |
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小聖岳から見た笠松尾根 | |
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小聖岳から見た南ア深南部 | |
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小聖岳から見た薊畑 |
薊畑の名称とは異なり、周囲はたくさんのマルバダケブキの黄色い花に覆われていた。ダケブキ平に改称した方がいいのではなかろうか。ダケブキのお花畑を登りきると傾斜が緩み、2478m峰を通過する。鞍部から明るいダケカンバ帯を登ると立ったハイマツ登場、稜線直下で右に折れて急登すると一気に森林限界を越えて開けた砂礫帯を登る。これじゃなきゃアルプスに来た気がしないな。グングン高度を上げて無人の小聖山頂に到着。まだ標高が足りないので周囲の山々が邪魔して近場しか見えないが、西側を見ると笠松尾根、そして平谷山から立俣山の尾根が良く見える。ここも懐かしいなぁ。そして昨年登った矢筈山はかなり低い位置にある。矢筈山から加加森山へと続く尾根はいつか歩いてみたいものだ。
薊畑に戻る | 聖平へと下る |
聖平分岐の鞍部 | 聖平分岐を小屋へ向かう |
聖平小屋前のテント場。到着時は1張だけ | 夕方のテント場風景。この日はかなり少なかった |
しばし休憩して飯を食ってから薊畑に戻り、少々時間調整して聖平に入った。もうお昼近いのでそこそこテントがあるかと思ったらたった1張で拍子抜け。前回の夏に来たときよりも格段に少ない。まあ、少ない方が静かでいいけど。それに夕方までには増えてくるだろう。静かに寝られるようにできるだけ独立した場所で大型のテントが近くに張れない様な場所を念入りに調査し、小屋から離れるが最下段の1つ手前でシラビソの下に場所を確保した。夕方にはいい数になるだろうと予想したが、キャパシティーの半分にも満たないほど少なかった。いったい今年はどうなっているんだ?? なんだか大学パーティーが少ないような気がするが。夕方に弱い夕立がきたが大したことはなく終わった。
翌朝は3時に起床、空を見上げると星が見えるが輝きは弱々しく、薄い雲が出ているようだ。山頂で展望が得られるのか不安はあるが、今日は天気が悪くなければ東尾根に突入するので計画どおり早めに出発することにする。飯を食い終わってザックに必要な物のみ突っ込む。防寒着をどれだけにするか悩んだが、これから雲が厚くなって日差しが無い場合は体感温度はかなり寒いだろうからとダウンジャケットも持っていくことにする。もちろんゴアは必要だろう。ハイマツが朝露に濡れている可能性が高い。出発時からTシャツに半ズボンの放熱対策姿だ。
聖平分岐 | 薊畑。まだ真っ暗に近い |
森林限界界から見た上河内岳 | 兎岳に朝日が差す |
小聖岳山頂 | 小聖岳から見た富士山 |
小聖岳から見た西側。一番遠いのは恵那山〜大川入山 | シラビソ高原 |
痩せた尾根を進む | かなり水量が細い水場 |
登ってきた稜線を振り返る | もうすぐ前聖山頂 |
小聖岳では充分明るくなり、富士山頂は薄い雲の下だった。この状況なら快晴ではないがまずまずの晴れか薄曇程度になりそうだ。展望は期待できよう。聖岳の本格的な登りが始まる直下の鞍部では僅かに水が流れていた。かなり細い流れだったので、このまま好天が続くとあと1,2週間で枯れてしまうかもしれない。聖へのジグザグ道には先行する親子2人が見えていた。追いつくかと思ったら最後まで追いつけず、山頂到着は3番手となった。
前聖山頂 | 前聖山頂から見た富士山 |
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聖岳から見た南ア北部(クリックで拡大) | |
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聖岳から見た南ア南部(クリックで拡大) | |
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聖岳から見た南ア深南部(クリックで拡大) | |
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聖岳から見た中ア(クリックで拡大) | |
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聖岳から見た奥秩父、奥多摩、小金沢連峰(クリックで拡大) | |
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聖岳から見た伊豆半島(クリックで拡大) | |
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聖岳から見た北アルプス(クリックで拡大) |
これで何度目の前聖山頂だろうか。残念ながら上空は雲が多めで下界は日差しがなく、遠くの山並みも写真写りはイマイチだ。期待していた北アルプスは北部で雲が多めで後立山南端より北側は見えなかった。それでも立山、剣らしき姿は見えており、肉眼では立山なのか大天井岳なのか判別できなかったが、帰ってから写真判定を実施したら立山、剣だったことが分かった。それより東側の山は南アルプス北部や赤石岳、荒川岳に邪魔されて見ることはできなかった。たぶん聖岳から奥日光は見えないだろう。
奥聖岳へと向かう | 奥聖への稜線 |
鞍部はお花畑 | 「福笑い」状態の標識 |
親子は先に下山し、こちらは奥聖へと向かう。後から登ってきた単独男性が先に奥聖に向かっていて、その後を追う。標識が立った場所よりも高いかもしれない3010mピークを越えて鞍部に出るとお花畑だ。なにやら看板があるが文字が剥がれて「福笑い」状態で、何が書いてあったのか解読不能。これって自然になるものなのだろうか。
奥聖岳三角点峰 | 奥聖岳三角点 |
奥聖岳から見た赤石岳、荒川岳 | 奥聖岳から見た東尾根 |
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奥聖岳から見た東半分の展望(クリックで拡大) | |
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奥聖岳から見た荒川岳の稜線 |
奥聖岳の真の山頂は三角点の手前にあるピークだが山頂標識はなくケルンが積まれている。一応、一般的には三角点を山頂としているようで、先客もそこで休憩中だった。これから始まる東尾根往復に備えて私も休憩、少々腹ごしらえする。ここから見る東尾根は以前と代わり映えせず、稜線上には踏跡が見て取れる。先端の白蓬ノ頭も見えており、前回は紅葉混じりだったが今回は青々している。まあ、藪はないので夏でも問題なかろう。先客が前聖に戻って無人になったところでいよいよ今回の山行の核心部に入る。
南東向きの尾根を下る。明瞭な踏跡あり | 小さな肩で主稜線と別れる |
東尾根への入口は奥聖岳から南東に下る尾根である。奥聖岳直下の主稜線北側は大きく崩れていて、その部分は尾根は東ではなく南東へ伸びているのだ。入口には寝たハイマツの中に明瞭な踏跡があり分かりやすい。ガレの縁ではなく南に少し離れた斜面をジグザグに下っていくと傾斜が緩んで主稜線に出るが、踏跡は主稜線に乗らずにそのまま南東尾根を下り続ける。
南東尾根を下り続ける | 小鞍部で東のルンゼを下る |
急斜面を下ると小鞍部が登場、ここで尾根を離れて東に下る小さなルンゼを下る。これも踏跡は明瞭なので分かりやすい。ルンゼ上部は潅木が茂っているがすぐに開けてガレ場上部に出て、踏跡はガレ上端を横断するように続いている。ガレ上部は棚状の段があって歩きやすく、遠めに見たよりも危険はなく淡々と歩けた。岩の所々に目印の赤マークが付けられている。ガレを横断し終わると草付きの斜面でここも踏跡があり、砂礫地には数日前と思われる比較的新しい足跡が残っており、以前よりも歩く人が増えているようだ。東聖岳東鞍部で東尾根に乗る。そこの岩には赤ペンキで矢印が横向きに書かれており、東尾根を上がってきた場合にはそのまま主稜線を登らずにここで右(南)にずれるように示している。まあ、これより上部の主稜線はハイマツの藪なので無雪期は登るのは難しいだろうけど。
下ってきたルンゼとガレ上部 | 東尾根に乗る。平坦地あり。踏跡明瞭 |
東聖岳から見た奥聖岳 | 東聖岳から見た東側 |
東尾根に乗っても踏跡は明瞭で、寝たハイマツが中心で1箇所だけ低いダケカンバを突っ切る所が鬱陶しいが基本的には歩きやすいルートが続く。鞍部から僅かに登ったところが東聖岳(2880m)山頂で、寝たハイマツがあるだけで山頂標識等はない。立木が無いので目印を付ける適当な場所もなく前回も何も残さなかったが今回もパスとする。
東尾根を下り続ける | この辺はハイマツが立って鬱陶しい |
しばらくは寝たハイマツ帯が続いて稜線上では見晴らしが良い。踏跡はあるし尾根は1本道で顕著な枝尾根は無いので、もしガスっていてもルートに迷う心配は無い。今は曇っているが高曇りで視界は良好なので全く問題ない。それ以前に一度歩いたルートで様子を知っているので不安材料は無い。2800m峰西側鞍部付近は立ったハイマツの中に踏跡があり鬱陶しいが激藪漕ぎというほどではなく通過する。濡れていたらちょっとイヤだけど。
2800m峰 | 2800m峰から見た東聖岳 |
2800m峰を下る | 2800m峰を振り返る。結構急 |
再びハイマツが立ってくる | これでもちゃんと踏跡はある |
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白蓬ノ頭へと続く稜線。 |
2800m峰付近は再び寝たハイマツとなり、ピークを越えると急に傾斜がきつくなって高度を下げ、傾斜が緩む辺りから立ったハイマツ帯に変わる。まだ森林限界を超えているので視界はあるが、両側からハイマツの枝がはみ出して歩きにくい。それでも踏跡は明瞭で、北海道日高のコイカクシュサツナイ岳から1839峰間の踏跡よりは濃いと言えるだろう。悪いことにこのタイミングで雨が降り始めた。ただ上空を見上げると明るいし、聖岳や赤石岳も雲に隠れていないので通り雨だろう。南を見ると霧のように見えている箇所があり、狭い範囲だけ雨粒が落ちてきているのだろう。雨はハイマツが濡れない程度で終わってくれた。念のためにゴアも持ってきているが使わなくて済むならその方が涼しくていい。
突如として立派な刈払い登場 | 刈払いの道を下る |
すぐにダケカンバ帯に突入、道が薄くなる | これが踏跡。藪は無いが格段に薄くなる |
鞍部手前で右に折れる。目印あり | シラビソ帯入口。これより先は踏跡明瞭、目印多数 |
ダケカンバ樹林を緩やかに下り、踏跡が右に屈曲すると2重山稜の谷を通過して登りにかかると同時に植生がシラビソ樹林に一気に切り替わろ。踏跡が明瞭化すると同時に多数の目印が表れる。これは前回歩いたときと変わらないが、目印が少し剥げ落ちてきているような気もした。まあ、それでも視界に入る範囲で複数のペイントが見えるので今でも全く問題ないし、目印の付けすぎだと感じるくらいだ。ここは目印が皆無でも踏跡だけでルートを追える。踏跡は複数あるようで目印が見当たらない踏跡区間もあったが藪が無いし登りなので適当に上を目指せば問題無し。
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シラビソ樹林の幕営適地。白蓬ノ頭西直下よりも広くて快適 |
シラビソ樹林の中は大抵このくらい明瞭な道 | この辺はどこもテントOKの平坦地 |
白蓬ノ頭西側直下の幕営適地 | 白蓬ノ頭山頂 |
白蓬ノ頭から見た東聖岳 | 白蓬ノ頭から見た東尾根の下り |
踏跡の最高地点左側には伐採されて展望が開けた小ピークがあり、ルートを外れてそちらに僅かに登ると見覚えのある白蓬ノ頭山頂に到着した。真中には三角点が鎮座し、伐採されて周囲の展望が良い場所なのも2004年と変わらなかった。まだシラビソの幼木は生えておらず、この分だとあと10年は展望は大丈夫だろう。山頂標識や目印は無く、せっかくなので矮小なダケカンバに赤テープを巻いた。天候は変わらずで高曇りの状態が続き、聖岳も赤石岳も見えたままだった。
白蓬ノ頭から下る踏跡入口 | シラビソ樹林中はこの目印が多い |
白蓬ノ頭西側鞍部の目印 | 東聖岳西鞍部からの登り |
これで今回の目的は達成で、休憩した後に奥聖向けて出発。立ったハイマツ帯は枝が「逆目」で登りでは枝を掻き分けながら登ることになる。そんな区間はさほど長くないので筋肉痛まではいかない。もしかしたら誰か下ってくる人がいるかと思いきや、今日は私一人で静かな尾根歩きを満喫できた。東聖岳では奥聖山頂が見えるが人間の姿は確認できない。この分だと無人の奥聖に飛び出すことになるかな。
ガレ手前は草付き中に踏跡あり | ガレ上部の棚を歩く |
ガレが終われば急なルンゼを登る | 稜線は近い |
稜線に出てなおも急登 | 奥聖岳到着 |
ガレ上部を横断して小ルンゼを登り、南東尾根を突き上げて奥聖岳到着。予想に反して登山者2名が休憩中。座っていると東聖岳から見上げた状態では人の姿は見えないようだ。1名は矢板から来たとのことで栃木県北からは南ア南部は遠いなぁ。
前聖岳へと登り返す | 前聖岳再び |
前聖岳から下山開始 | 小聖岳再び |
薊畑 | 聖平2日目。でもテントは少ない |
薊畑に到着するとこれから便ヶ島に下る人が数人休憩中。時間的には私も下山が可能だが、今回は涼むことも目的の一つなのでこのまま幕営することにする。聖平に戻ってまずは天気予報を聞く。当初の予報では明日も今日と同程度の天候のはずだったが、想定に無かった台風が沖縄近海で発生、宮古島に接近中とのこと。この台風は南アから遥かに遠く直接の影響は無いのだが位置が悪く間接的な影響が現れることになりそうだ。本州の南西に台風がある場合、等圧線が南北や左下がりになって湿った南寄りの風が吹き込んで、標高が高いところはガスに覆われるのが良くあるパターンなのだ。最新の天気予報では悪いことに静岡、山梨は夜から雨で明日も断続的に降り続くとのこと。これを聞いてよほど今日のうちに下山してしまおうかとも思ったが、食料、酒が余ったままで無駄な重さを担いで下る必要もあり、悩んだ結果このまま幕営し、明日朝下山することに決めた。
沢で水浴びして本日分の料金を支払い、テントの中でラジオを聞きながら昼寝。夜まで天気は大丈夫かと思ったら午後の早い時間ににわか雨が降り出し、それが上がると本日始めて青空が姿を現した。おや、このまま天気が回復してくれるのかと半分期待したが、夕方になると雲に覆われて夜になると雨が降り出した。そのまま翌朝までしとしと降り続く雨だった。テントは昨日より増えたが、満杯になるほどではなく隙間がかなりあった。先日の北岳や常念岳とは大違いだった。
当初予定では3時半に起床、4時半出発だったが3時半ではまだ雨が降り続き意気消沈で沈没。テントを叩く雨音が弱まってきた4時過ぎから飯の準備をする。飯を食っている途中で雨が止んだらしく、テントを畳むなら今のうちと急いで飯を食って片付け、外に出てみるとまだ雨が止んでいる。もしかしたら今日はこのまま曇りで終るのかもしれないが、再び雨が降るかもしれないので急いでテントをしまって出発。フライのおかげでテント本体はさほど濡れていないがフライはびしょ濡れで、下界で充分乾燥させる必要がある。水分を含んだフライは重くなっているが、食い尽くした食料よりは軽い。
雨が上がったテント場を出発 | まだ濡れた木道 |
薊畑へと登る | 聖岳山頂は見えていた |
気温は高めで最初からTシャツ半ズボンで出発、もし雨が降っていたら傘を差して行こうと思っていたが傘の出番は今のところない。薊畑を通過して樹林帯に入ってしまえば弱い雨なら傘は不要で歩けるだろう。出発は5時半を過ぎて周囲は充分明るく、当然ながら小屋泊まりの人はとっくに出発しているだろう。朝まで降っていた雨の影響でテント組は全般的にスタートは遅かった。こんな天気でも上河内岳、聖岳には雲がかかっておらず、本当にこのまま曇りで済むかもしれないと希望を持たせるような状況だった。
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薊畑から見た上河内岳〜加加森山。まだガスはかかっていない | |
薊畑 | 遠山川が見えてきた |
薊畑を越えて下山にかかるが雨はまだ落ちてこない。少し前に男性3人のパーティーが先行、いいペースで歩いてくれてしばし私が追い越す必要はなかった。ただ、少しでも足元が悪くなるとペースがガクッと落ち、そんな2回目の場所で道を譲られ私が先行することになった。しばらくは付かず離れずで歩いていたが途中で休憩に入ったようで足音が遠ざかった。今日下山する人が少ないのか、それとも時間的に早いのかは分からないが追い越したのはこのパーティーの他に大人数のパーティー、そしてかなり下ったところで2組のパーティーがいただけだった。尾根の下の方になると次々と登ってくるパーティーとすれ違うようになる。
西沢渡。少々水浴び | 登山口に戻る |
このルートにヒルがいるかどうかは知らないが、南アだったらいても不思議ではないので時々靴下の周囲を見てヒルが取り付いていないか確認した。結局、この雨で湿った登山道を半ズボンで歩いても引っ付かなかったので、この登山道近くにはいないようだ。よかったぁ。西沢渡に到着して濡れタオルで汗を拭い、さっぱりしてから再び出発。無事に便ヶ島に到着した。まだ雨が降っていなかったので曇っているがテントとフライを広げて干しながら着替えや片づけをしていたがやがて雨が降り出して物干し中止。車を走らせても雨は断続的に降り続き、完全に止んだのは高遠に入ってからで、杖突峠の小さな公園で虫干しと昼寝兼用。再び車を走らせた。八ヶ岳、南ア北部の山は雲に覆われていた。